行政における権利の濫用の禁止の原則、信義誠実の原則、信頼の原則
民法には、権利の濫用をしてはいけない。審議誠実にふるまいなさい。相手が信頼したことがらを裏切らないようにしなさいという原則があります。
これは行政法と呼ばれる分野ではどうなっているのでしょうか。行政における契約は、原則として、私法上の契約と変わらないので、民法の規定も、例外的に法律などで定められていない限りは当てはまると思われます。
行政における権利の濫用の禁止
裁判所は、行政の判断に対して権利の濫用を理由として、無効と判断した判決はあるのでしょうか。あります。
ソープランドが作られることを阻止するために、わざわざ児童遊園を作ったという判断が、権利の濫用とされたケースがあります。
行政における行為でも、権威の濫用の禁止の原則は考慮されます。
信義誠実の原則と信頼の原則
もちろん行政においても、契約関係は私法と異ならせる必要性が別段なければ、私法における契約を考えればよいのですから、審議誠実の原則と信頼の原則も適用されます。
では、次のようなケースはどうでしょう。税金を払うときに、税務署の言うとおりに申告したのに、そのあとに間違ったことが判明して、多く課税されたという場合です。
税金を支払ったほうは、多く税金を取られることを考えていなかった、いったとおりにしたのにという不満があると思います。
けれども、税金は、国民の公正な負担であるので、正しい方法で行われなければならないという考えが強くあります。
このような場合に、信義則をそのまま適用してしまうと、国民の公正という部分が害されることにもなってしまいます。
さて、裁判所の判例はどうでしょうか。裁判所は、課税関係の場合は、信義則の原則は劣後するという判決を出しています。
特別法の規定がない場合
特別法による規定がない場合は、一般法が適用されます。そのことを示した判例に公営住宅における契約関係の判例があります。