行政庁の裁量

 行政においては、法律で定められたことの範囲内において裁量が認められていることが多い。裁量が与えられているということは、行政庁は範囲内で自由に決定ができるということである。

 どういう場合にこれが問題になるかといえば、裁量で行われた決定に対して住民が不満を持つ場合である。行政処分は行政の意思表示のみでなりたつ法律行為であるから、不利益処分をされた側にとってはその影響は大きい。裁量で行われた行政処分に対して、不服がある場合は、どうしたらいいのか。

 裁量における決定は常に有効なのか。それとも司法に訴えることができるのか。司法に訴えることができるのはどのような場合か。一つは、裁量権の逸脱なのであれば、その取り消しを司法に求めることができると思う。

裁量の濫用や逸脱があった場合

 裁量の濫用や逸脱があった場合は、取り消しの訴えによって、取り消すことが可能です。どうやって判断されているかといえば、たとえば、平等原則に反しないかという点です。行政は住民に対して不合理な差別をしてはいけませんから、不合理な差別が含まれてる行政行為なのであれば、それを裁量の濫用とみなして、取り消し訴訟を起こすことも可能でしょう。

 また、行政は不必要に住民の私的な領域に侵入すべきではないという考えがありますから、目的達成手段を必要最小限のものに限定する比例原則に違反していることも、裁量権の濫用とみなして、取り消し訴訟を起こすことも可能でしょう。ある目的を達成するのに、少しだけの不利益しか必要がないのに、必要以上の不利益を与えた場合などが該当します。

基準が存在する場合に、それからずれた決定をした場合

 行政処分において、行政内において決定するためのある種の基準が存在したとしましょう。これとずれた基準の決定を行政庁がした場合はどうなるのでしょうか。

 問題になるのは、そのずれた決定が、行政処分の対象となった人に、不利益をもたらす場合です。判例は、行政裁量が認められ、当然に違法になるものではないといっています。

行政法上の「できる」の意味

 行政法上で「できる」という文言があっても、それが必ず裁量があることを意味しているわけでもない。立法趣旨によって判断する必要がある。