国家賠償法に関連する判例

 国家賠償法に関連する判例です。

同一の地方公共団体に属する公務員による一連の職務行為

同一の地方公共団体に属する公務員による一連の職務行為の過程において他人に損害を生じさせる事態が発生した場合,一連の行為のうちのいずれかに過失による違法行為があったのでなければ当該損害が生ずることはなかったと認められるときは,どの公務員のどのような違法行為によるものかが特定されなくても,当該地方公共団体は,その不特定を理由として損害賠償責任を免れることができない。(判例)

 被害者の保護のために責任の所在がはっきりと特定できなくても、一部において故意が過失があれば、損害賠償が認められるようだ。

裁判官の過失を認めて国家賠償を認容した事例

裁判官による争訟の裁判については,当該裁判官に事実認定や法律解釈の誤りがあったとしても,それは上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべきものであるから,国家賠償法第1条第1項にいう違法な行為に当たるものとして争うことができるのは,そのような訴訟法上の救済が及ばない瑕疵に限られる。(判例)

 裁判官の誤りは、基本的には訴訟での解決によって是正されるので、原則として国家賠償はできない。この判決は例外として、治癒できない瑕疵が存在したので、請求を認めたようだ。

公務員の私利私欲による職権乱用

(間違いの説明)国家賠償法第1条の「その職務を行うについて」に該当するためには,少なくとも公務員が主観的に権限行使の意思をもってする場合であることを要するから,公務員が私利私欲を図る意図をもって職権を濫用し,その結果他人に損害を与えたとしても,当該公務員個人の損害賠償責任が生ずるにとどまり,国又は公共団体が賠償責任を負うことはない。(関連記事)

 被害者救済の立場として、被害者は、一貫して、国に対する責任を求めることができるようだ。公務員は、職場では、罰則があるかもしれないが、被害者に対しては、賠償する必要はないようだ。

建物取引業者の不正な行為があるのに、宅地建物取引業法に基づいて、行政が監督処分を行わなかった

宅地建物取引業法は,宅地建物取引業者の不正な行為により個々の取引関係者が被る損害の防止・救済を目的とするものではないから,当該業者に対する行政庁の監督処分権限の不行使が著しく不合理と認められる場合でも,当該権限の不行使は国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けるものではない。(関連記事)

 問題となっているのは、不正な行為を行っている宅地取引業者がいるということ。それなのに、行政は、監督するのを怠っている。そこで、宅地建物取引業法に違反しているのに、監督権を行使していないという理由で、行政に国家賠償を請求した事例になっているようだ。

 これは建築基準法による違法建築を放置したというような事例には該当しないと判断されたようだ。その理由は、宅地建物取引業法は、損害の防止・救済を意図したものではなくって、単に、取引をする人が守るべき基準が書かれているだけだから。