抗告訴訟の訴えの利益 | 行政法

 処分取り消しの訴えや裁決取り消しの訴えなどの抗告訴訟を提起する場合は、訴えの利益が必要です。司法試験の勉強としては、判例で、どのような場合に訴えの利益があるとされたかを覚えておきましょう。

 一般論としては、処分によって直接的に権利を害される必要があり、反射的に利益を害された場合は、訴えの利益がないとされますが、どこまでが直接的で、どこまでが反射的なのかは、状況によるとしかいえません。

建築確認

 建築確認の取り消しを求める訴えにおいては、建築が完了し、検査済証の交付がなされると、訴えの利益はなくなると、判例は示しています。

都市計画法による開発許可

 都市計画法に基づく開発許可は、工事が完了して、検査済証が交付されると、訴えの利益はなくなります。ただし、開発許可自体が判決によって、取り消された場合は、違反是正命令という義務が行政庁に残っているので、訴えの利益はなくならないと判例は示しています。

入管法

 入管法違反で、不法退去と判断されたあとに、日本をでていってしまった人は、原則として訴えの利益は消滅します。ただし、入管法では、5年または10年の再入国できない条件がつくので、この期間の間は訴えの利益があると判例は示しています。

訴えの利益があるとされた判例

  • 飛行場開発における周辺住民
  • 原発開発における周辺住民
  • 土地改良事業の工事と換地処分が完了して原状回復ができなくなった場合の認可処分の取り消しを求める訴え(なぜ都市計画法や建築許可の場合と整合性がないんだろう?)

訴えの利益がないとされた判例

  • 墓地開発における周辺住民
  • 都市計画法に基づく都市開発区域外の周辺住民
  • 埋め立て水面の周辺で漁業をいとなむ者
  • 建築工事が完成した後の、建築確認処分の取り消し
  • 都市計画法における開発許可の取り消しの訴えの利益は、工事が完了し、検査済証が交付されると失われる